
守るため、(「法律によって飲酒の習慣など定めることなどできない」)、それに規制政策は責任のとれる消費者を罰することになるばかりか、問題解決どころか問題を産出することになる、と云うのです(どんな問題かは知りませんが)。アルコール産業は、最高の知性と市場分析力を動員し得る、洗練された、強大で、巨大な資本力を有する事業だと長年思われてきました。しかし、それにもかかわらず、アルコール問題の真の姿と規模について、大量の飲酒癖が、特に家族や友達の生活に与える暗い影がいかばかりかについて、アルコール産業は未だに全く子供同然であると思われてなりません。陽気に愛想を振りまきながらパブから出てきた男が、家庭内不和、借金、云いかえれば現実の待ち受ける家に帰ったとたん、何が起こるか分かっていないのです。もちろん、飲酒に対して比較的明るいバラ色の見解を持っているのは業界だけではありません。大部分の大人達ばかりかあまりにも多くの子供達まで、飲酒によって人生を台無しにした人を一人やそこら知っています。それにもかかわらず、アルコール問題の対策を求める世論が盛り上がる気配はほとんどありません。もちろん、大部分の人は楽しい経験だけに目を向けたがります。しかしアルコール業界が毎年つぎ込む1億6000万ポンドもの宣伝費がこの傾向を強めるのに大いに役立ち、アルコールから、どんな形態であれ、二日酔いではなく夕ベの最高の楽しみを連想するような社会的習慣を作り上げたことは、疑う余地もありません。政策決定において世論を考慮し、国民の利益を図ろうとするなら、間接的に宣伝の影響に思いを巡らすことになります。世論は、政策に影響を及ぼす役割を担っています。そして業界は何年もかけてそれを操作してきました。その結果、ビールの宣伝は常に最も人気のあるコマーシャルに属しています。当然世論は、アルコール業界だけに責任が有るとは考えられません。但し、業界は討論の相手になる誰よりはるかに強大な力で世論に影響を与え、世論を形成することができます。スポンサー契約を通じて、他の強力で人気のある企業と提携することも討論の相手の誰より意のままです。最も著名なのはスポーツ界で、例えばサッカーは、現在アルコール業界が最大のスポンサーです。そしてもちろん、またも、スポンサー契約を通じて、レジャーや娯楽、楽しい時間、役割モデルなどと結びつくことになります。他にも公共政策の環境に影響を及ぼす方法はあります。適度な飲酒が中年男性と閉経後の女性の心臓病にいいという、マスコミを数年前賑わせた話が根強く、これが適正飲酒の勧告とどう関わるかについて国民を混乱させてしまったことは疑いようがありません。特に、中年男性と閉経後の女性に限ってと云う部分がよく落ちてしまったからでしょう。関係者の間でこの点について同意が生まれようとしていた矢先、このマスコミ報道は、政府の適正飲酒勧告の見直し時期と方法に影響を及ぼしたのは明らかです。政策に影響を与える中心的役割を担っているのは世論と世間が問題をどう理解しているかですが、商業界は長年にわたりそれを操作してきました。ビールは、常に最も人気があるテレビコマーシャルに属しています。長い前置きの後、これから英国におけるアルコール業界の体質の変換の鍵について述べます。アルコール業界とは、以前とは異なり、単に醸造所や蒸留所を指すのではなく、またもちろんパブだけを指すものでもありません。
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